彼女との出会いは、約 10 年ほど前にさかのぼります。まだお互いに作家として活動して間もない頃だったように思います。たまたま遊びに行ったクラフトフェアに和美ちゃんが出展されていたのが、彼女との出会いでした。
たくさんの出展者の中でひときわブースの空気感が他とは違っていて、引き寄せられるように足を踏み入れたのがきっかけでした。
VOL.01 exhibition「共生」取材より 2021年3月
多くの陶芸作家さんが作品を山積みに積み沢山並べている中、彼女のブースだけgallery で展示しているかの様な、余白をしっかりととり、一つ一つの作品がしっかり見える形で大切に置かれていて、作り手の意思の様なもの、純粋な志の様なものを感じたのが第一印象でした。
そんな和美ちゃんとのご縁は、とても程よい距離感の中で 10 年を経て、今も交差しながら続いています。今回の展示に辺り、彼女の工房、暮らしを営む土地、岡山県を訪ねて今の彼女と改めて出会い、沢山の話をしながら時間を過ごしました。
陶芸との出会い
高校卒業後に陶芸教室に通いだした彼女曰く、
「陶芸は設備だったり、初めに習わないと出来るイメージがわかなかったから教室に通いだした。何でも手作りが好きだったから、お菓子を作るのも、植物を育てるのも、料理をするのも、洋裁をするのも、何でも作ってみるのが楽しいから」
ととても自然に伝えてくれました。
やり始める中で、ごく自然な形で続いていき、気づいたら自分の世界を形に出来るものが陶芸になった。
「陶芸家になりたい」という強い意気込みや夢ではなく、ごく自然に自分らしく生きる道の途中に偶然の様な必然的な出会いやきっかけがあって、「好き」を続けていく事で、今の和美ちゃんが出来ているのだなと感じます。
お茶の時間、料理の時間
和美ちゃんに会うといつも一番最初にお茶を淹れて振舞ってくれるのですが、今回もそんな始まりからでした。
彼女が作った茶道具が並び、今がまさに旬の梅の花を愛でながら慣れた手つきで丁寧に淹れてくれるお茶の時間は、とても特別な気張ったものではなく、安堵の中でゆったりと流れる、自分に還れる、彼女曰く、「整う時間」になるのです。
「忙しい時ほど、お茶の時間を大切にする」と和美ちゃんは言います。
「瞑想するより、瞑想になる」
そんな時間をお茶の時間で日々に取り込んでいるそうです。
そんな彼女の話を聞いて、まずは自分の身体や呼吸を整えた上で制作に入る事で、本当に気持ち良く誠実な仕事が出来るのだなと、改めて感じる事が出来ます。
また、和美ちゃんといえばお料理!と思うほど料理上手な人です。
「まず最初に料理があって、焼き物がある」と彼女は言います。
私達は何度も一緒に料理をし、食卓を囲み、楽しくて美味しくて美しい、豊かな食事の時間を囲んでいる仲ですが、いつも無駄がなく遊び心がいっぱいで、工夫しながら側にある食材を大切に料理する彼女から私自身も沢山の事を学んでいます。
彼女の器を実際に日常で沢山使いたくなるのは、こんな生活の中から生まれるエネルギーが焼き物に宿っているからなのだと、改めて感じます。
言語を超えたもの
本当に美しいと信じれる事や、良いと思える物作りとは何だろう?
そんな事を初めて直接訪ねてみました。
お互いに自問自答するような時間が流れる中、彼女の口から確かめるように
「日々受け取るものをそのまま翻訳出来た時、言語を超えたもの」
そんな言葉がぽつりぽつりと出てきました。
VOL.01 exhibition「共生」取材より 2021年3月
それはこの土地から頂く何か、沢山の生命がそこここに存在して、その中に私達が或る事や、例えば蕾が膨らんで花を咲かせる瞬間の美しさや、工房の窓から見える、日々変化する景色を見ている時間
そんな日々の生活の中で受け取る言語化出来ない美しさを、そのまま純度高く形に変換できた時、
心から身体が反応する、美しい物作りが出来たと思うのかもしれません。
photo | Ayaka Onishi
今展示『共生』では、
土地や日々の生活の中から受け取るエネルギーと、共生する事で出来上がる河合和美の世界、また川井有紗との共作作品も並び、ens でしか見れない作品群、世界を感じて頂けると思います。
私自身、春真っ只中の和歌山にて、彼女の世界を待ち焦がれているようです。